大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(ラ)264号 決定

抗告人(債権者) 青山貞一

右抗告人代理人弁護士 手塚八郎

〃 古沢清伸

主文

原決定を取消す。

理由

抗告の理由は別紙のとおりである。

記録によると、原裁判所は本件不動産につき登記簿上抵当権設定仮登記をもって表示された債権をも民訴法六五六条一項の差押債権者の債権に先だつ不動産上の負担としてこれに加えたうえ、本件競売が同条一項にいう不動産上の総ての負担及び手続の費用を弁済して剰余ある見込なしとするときにあたるものと認定し、同条所定の手続を経たうえ原決定をしたことが認められる。

しかしながら、抵当権設定仮登記は順位保全の効力を有するに止まるから、抗告人において抵当権設定登記の欠缺を主張する以上、抵当権設定仮登記がされたのみの債権をもって、ただちに抗告人(差押債権者)の債権に先だつ不動産上の負担と解することはできない。

記録によれば、本件不動産につき抵当権設定仮登記で表示された債権額を差押債権者の債権に先だつ不動産上の負担にあたるものとしないときは、最低競売価額をもって不動産上の総ての負担及び手続の費用を弁済して剰余あること明らかであるから、原決定は民訴法六五六条の解釈適用を誤った違法があり取消を免れない。

よって、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 枡田文郎 裁判官 後藤静思 布井要太郎)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例